2020年8月29日土曜日

「あみもの」一首評 投稿:西淳子 2

 

ぬいぐるみたちよ裏口から逃げろ閉店をしたゲームセンター

   /屋上エデン (「あみもの」第一号)



私がもしもゲームセンターの店主だったら、「なに勝手なこと言ってくれとんねん!」ってキレるだろうなあ 。

でも、私はゲームセンターの店主じゃないので、「いいぞ、もっとやれ!」と思いました(笑) 
だって、ちょっと見てみたいじゃないですか。ぬいぐるみたちが裏口から逃げるところ。きっとファンシーなんだろうなあ。

ただ、「閉店をしたゲームセンター」とあるから、たぶん深夜ですよね(「閉店」がその日の営業を終えるほうの意味であれば)。
もしそうだとしたら、「ファンシーでかわいい!」よりも「しっ、心霊現象!?怖っ!」という思いのほうが強いだろうなあ。
やっぱり、ぬいぐるみたちに裏口から逃げろと指示するのは止めてください!

ていうか、ぬいぐるみたちに指示している主体は何者なんだ?!
「逃げろ」と命令しているから 、ぬいぐるみたちよりも偉い存在なのだろうか。
「閉店をしたゲームセンター」とあるので、ゲームセンターの従業員とか関係者なのかな。  もしかして、ゲームセンターの店主……?!

だとしたら、目的は何なんだ?!
ゲームセンターに閉じ込められているぬいぐるみたちを哀れんで行ったのかな。
それとも、我々の知らぬ大きな企みが始まるのだろうか ……。

この歌に限らず連作全体がSFチックだから、本当にこの歌のぬいぐるみたちは逃げ出しそうである。
たとえ逃げ出さないにしても、閉店をしたゲームセンターでぬいぐるみたちに対して、裏口から逃げろと指示する人物がこの歌のなかにいるのは確かだ。
何にせよホラーである。

 最後に、「閉店」=「店じまい」の場合もあるので、そちらについても考えてみます。

「店じまいをしたあとのゲームセンターの景品(ぬいぐるみなど)ってどうなるんだろう」と思い、一応ネットで調べてみました。
その結果、不用品として回収されたり、オークションなどで売れそうなものは売られたりするみたいです(あんまり情報が載っていなかったので本当なのかは不明です)。

もし上記の内容が本当であれば、主体はゲームセンターの閉店をきっかけに、ぬいぐるみたちを自由にしてやりたかったのかもしれません。「裏口から逃げろ」は主体なりの優しさなのかも。

評:西淳子(Twitter: @Jacky244Ray)

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