2019年1月27日日曜日

「あみもの」一首評 投稿:雀來豆


太陽がかえってきたらみつかって勝手な名前つけられたいね、そしたら博物館に行けるよ。恐竜はうそじゃないっておしえてやるよ

   /真壁カナ『いつかクレバスに捨てたもの』(『あみもの』第十三号)


 ちょっと「とんでもないもの」を見つけたかもしれない感のあった真壁さんの連作。一首でというより、連作で読むととびきり面白いというタイプ。面白すぎて、うれしくなった。一見、SF小説仕立てのようだが、これ以上書き込むと本当に小説のあらすじのようになって面白くないということがわかっていて、その手前の丁度良いところで歌っているのが秀れたところ。好き放題やっているようで、ちゃんと短歌に着地している。

 引用したのは、八首連作の最後に置かれた歌。これだけ読むと、何やら荒唐無稽の作品のようだが、心配は無用。ちゃあんと起承転結のある物語のような構成があって、受け止め易い連作になっている。その物語には明確な時間軸も備えられているので、わかりやすいというか、わかりやすすぎるのが難点と思えるほど。物語性にしても、時間軸にしても、構成を整えすぎると、短歌の連作ではなくて、小説になってしまいそうで、これくらいが丁度いいかなという感じがした。

 年長さんともなると短歌を読んで心が躍ることは少ない。端正な歌、巧みな歌はいっぱいあるが、ジョナサン・キャロルの小説と初めて出会ったときのように、「とんでもないものを読んでしまったなあ」という喜びを味あわせてくれるような短歌はまずないのである。

 それがないものねだりであるとすれば、せめて「わあ」と一瞬でも驚きたい。歌集一冊、連作全部が無理なら、一首、いや一句(五音、または七音)だけでもいいので、こころを揺さぶられてみたいのである。

 あみもの13号では、この真壁さんの連作に、いちばん心が躍った。
 笛地さんの作品の面白さは、別格かなあ(^^)


評:雀來豆(Twitter:@jacksbeans2 )



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